INTRODUCUCTION
イントロダクション
『バッテリー』のあさのあつこが手がける近未来SF小説『NO.6』。
“聖都市”の別名を持つ理想都市「NO.6」でエリートとして育てられた16歳の少年・紫苑(シオン)と、NO.6の外に広がるスラム地区「西ブロック」に住むミステリアスな少年・ネズミ。
ふたりの出会いと成長、そして襲い来る過酷な運命を描いたこの作品が、実力派アニメーションスタジオ・ボンズによって完全アニメ化!
監督に「機動戦士ガンダム00」(出演)の長崎健司、シリーズ構成に『とある科学の超電磁砲』の水上清資を迎え、またキャラクター原案・コンセプトデザインに人気のイラストレーター、toI8を起用。骨太なストーリーと重厚な世界観は、きっと観る者の心を掴んで離さない。
すべてが約束されたエリートとして生まれた紫苑。
12歳の誕生日、彼は偶然、部屋に転がりこんできた少年を助ける。
翌日、ネズミと名乗ったその少年は、まるで幻のように姿を消した。
だが、その出会いは紫苑の心にずっと残り続けていた……。
そして4年後。紫苑の身の周りで次々と起こる奇怪な事件
宿主の身体を一気に老化させる謎の寄生バチ、
二度と生きては外に出られないと言われる矯正施設の存在、
そして次第に明らかになる“聖都市”の本当の姿……。
友情というにはあまりにも激しく、
宿命というにはあまりに切ないふたりの物語が、静かに幕を開ける。
少年は、窓を開け放つ。
おのれの内なる“呼び声”が導くままに。
その先に何が待っているのかも知らないままに……。
THE WORLD OF NO.6
キーワード
たび重なる戦禍により絶滅の危機に瀕した人類が、最後の希望を託し、残された6つの土地に建造したといわれる人工都市。
6つあるうち、6番目の都市の意味で「NO.6」と呼ばれている。
周囲を高い壁によって区切られたこの都市は、外部と完全に遮断されており、そこに住む人々は、市当局によって保証された安心と、安定した暮らしを手にすることができる。
ゆりかごから墓場まで保証する、行き届いた医療。
人類の叡智を正しく伝えるための充実した教育。地上に残された数少ないユートピアのひとつであることから、ここは「聖都市」の名でも呼び、賞されている。
しかもその一方で「NO.6」は市当局によって完全に管理された都市でもある。
住人は腕につけたリストバンドによって管理されており、またその知能によって厳密にランクづけが行われる。居住するエリアさえも、その知能ランクによって定められているのである。
またそれだけでなく、住人は市当局への絶対的な忠誠を要求され、その管理体制によって不満を漏らしたり、反抗的な態度を取った者は即刻、西ブロックにある矯正施設へと送り込まれる。
人類にとっての“最後の希望”は、同時に逃げ場のないディストピアでもある。
「NO.6」の内部は、大きく東西南北の4つのエリアに分かれている。
畑と牧草地が広がる東側に位置するのは、高級住宅地の「クロノス」。
ここには住人が2歳の時に行われる知能試験によって選別された、いわゆるエリートたちとその家族が居住する。
一方、「NO.6」内の西側にあるのが「ロストタウン」。
クロノスの落ち着いた雰囲気とは逆に、猥雑な空気の流れるこのエリアには、選別試験に漏れてしまった人々が居住する。
壁のすぐ外に「西ブロック」が位置していることもあって、治安はけっしてよいとは言えない。
また、衣食住はもちろん、最高の医療と万全の教育を受けられるクロノスと較べると、住人の生活レベルはかなり落ちる。
もともと紫苑たちはクロノスに住んでいたが、ネズミを匿った一件が問題視され、ロストタウンへと追放された。
母親の火藍は、このロストタウンで小さなパン屋を営んでいる。
「NO.6」の中心部は、全体の1/6ほどの大きさになる森林公園が占めている。
その真ん中に立つ巨大な建造物ことが、「NO.6」の市庁舎だ。
丸いドーム状の本体の周囲を、六角形の外壁で取り囲んだこの建物は、その外見から「月の雫」と呼ばれ、風の強い日には、その特殊な構造ゆえにまるで泣き声のような大きな音を立てることで知られている。
また、この「月の雫」の周囲には、市立病院や「NO.6」における警察的な役割を果たす治安局の建物が立ち並ぶ。まさにこの都市の心臓部ともいえるエリアだ。
人生におけるリスク(病気や事故など)を可能な限り最小限に抑えた理想都市「NO.6」では、住人の多くが自らの寿命を全うすることができる(少なくとも建前上は)。
そして、ある一定年齢を超えた老年の住人たちが、市当局の勧めにしたがって入居する施設が、この「黄昏の家」である。
ここでは、多くの老人たちが親切な介護ヘルパーに見守られながら、人生の最期のときを穏やかに迎える。
まさにゆりかごから墓場まで、住人を手厚く保護する「NO.6」の“聖者”としての顔を知ることができる施設といえるだろう。
また住人が亡くなった際には、遺体とともに身の回りの遺品が家族に手渡される。
しかし、沙布の祖母が亡くなったとき、その遺品の中に彼女が決して手放すことのなかった編み棒が見当たらなかったことから、沙布は「NO.6」の運営体制に疑問を持つようになる。
「NO.6」の西の外壁に、張り付くように広がるスラム街。
物語内で紫苑が知り合うことになる、イヌカシや力河を初め、大勢の住人がここを根城にしている。
飲食店が並ぶ市場などもあるが、住人の多くが今日食べるものにさえ困窮するほど、生活レベルは低い。
また警察のような治安維持のための組織が存在していないため、一種の無法地帯と化している。
ここには「NO.6」に通じる4つのゲートのうちひとつが置かれており、ロストタウンにあるゴミ処理場を介して、「NO.6」内部との経済活動も非合法に行われいる。
また「NO.6」の当局は、西ブロックの住人を「清掃作業」という名目で殺戮及び実験体として矯正施設へ送り込み続けている。
捕まった住人は二度と生きて帰ってくることはない。
西ブロックの外れにある施設。
「NO.6」で犯罪を犯したものは、治安局の手によって
矯正的にこの施設へと送り込まれる。また、収容された者は「VCチップ」と呼ばれるチップを体内に埋め込まれ、その行動は厳重な監視のもとに置かれる。
一度、ここに送りこまれると二度と生きて外に出ることはできないと言われ、また実際に中の様子を知る者はほどんどいない。
ネズミは、この施設から月の雫へと搬送される途中で脱走を図った。
森林公園に勤務していた紫苑が、たまたま目撃することになった怪死事件の原因。 このハチは人間の体内に寄生しており、孵化すると同時に宿主の身体を一気に老化させ、宿主を数分のうちに死に至らしめる。 「NO.6」では、同様の事件が多発しており、紫苑が目撃したもの以外にも、寄生バチが存在している様子。 しかし、市当局の厳重な情報規制によってその存在は隠されている。 紫苑の身体にも宿っていたが、ネズミの懸命の処置により、彼は一命を取り留めた。 紫苑の髪が真っ白になったのも、このハチによる老化現象が原因と思われる。
人間にはおよびもつかない、絶対的な力を持つ者。 自然をあがめ、ともに生きる「森の民」の崇拝の対象だったが、偶然、「NO.6」の研究者に発見される。 その圧倒的な力に魅せられた「NO.6」の上層部は、森の民を追い払い、虐殺してまで「彼女」を手に入れようとしていた。 ネズミはそのとき犠牲になった、森の民唯一の生き残りである。